草原の目覚め
風が草原を渡り、穏やかなさざめきを運んできた。
カズマはゆっくりと目を開け、青々とした空と、遠くに見える山々のシルエットを見上げた。
彼の心は平穏で、身体はリラックスしていた。
しかし、その心地よさは長くは続かなかった。
彼はここがどこであるか、そして自分がどうしてここにいるのかを思い出し始めた。
「またか…」カズマはつぶやいた。
これは彼にとって、15回目の転生だった。
最初の転生は、彼がまだ10代の若者だった頃、突然の事故によってこの世を去った後のことだった。
目を覚ますと、彼は異世界の王宮で目覚め、そこで彼は伝説の英雄として迎えられた。
その世界では、彼は魔王を倒し、平和をもたらす運命にあった。
それから、彼は様々な世界を渡り歩き、毎回異なる役割を果たしてきた。
魔法使い、勇者、商人、盗賊… 彼は数え切れないほどの冒険を経験し、無数の友情を育み、そして何度も恋に落ちた。
しかし、それらの記憶は、新たな転生のたびに薄れていった。
今回の転生では、彼はただの村人として目覚めた。
彼には特別な力も、運命も与えられていない。
ただ、普通の生活を送ることだけが許されていた。
彼は立ち上がり、周囲を見渡した。
草原の向こうには小さな村があり、煙が静かに立ち上っていた。
彼はその方向に歩き始めた。
「今度こそ、普通の人生を…」カズマは心の中で願った。
しかし、彼の内にはまだ、冒険への渇望が残っていた。
彼はそれを抑えつつ、新しい人生の第一歩を踏み出した。
